宇宙の産み落とした私生児

とよかわの西洋占星術について考えるブログ。鑑定依頼は件名「鑑定依頼」でこちらへ→astrotoyokawa@gmail.com

【感想・書評】河内邦利著「星の階梯Ⅰ」(カクワークス社)を読んだ

 2018年発行、河内邦利著「星の階梯Ⅰ」を読んだ。
 著者はジョン・フローリーに師事し、イギリスで西洋占星術を学んだ人。現在はホラリー占星術を中心に実占やセミナーを実施しているようだ。この本は、おもに、17世紀以降のモダン占星術からは失われてしまった伝統的占星術のエッセンスを詰め込んだ入門書的な位置付けの本だろうか。
 カクワークス社は自費出版協力出版?)の会社で、言っては悪いが造本に関してはそれなりの粗い仕上がり。本文用紙はつるっとしたファインコート紙にオンデマンド印刷(トナー印刷)なので、紙や文字がギラギラと光を反射して、可読性が低い。本文フォントも本文用ではなく見出し用に使うようなウェイトの重い(太い)ものを使用してしまっておりさらに読みにくい。挿入される図も解像度が低くてジャギジャギでめちゃくちゃ素人っぽい。デザイナーの手が入っているとは信じがたい。また、ソフトカバー仕上げの表紙でカバーも無いので(同人誌のような感じ)、繰り返し読むなら表紙補強のために自前でカバーを用意する必要があります。
 元々複数に分かれていたテキストを一冊にまとめているのだろうか、注釈のタイミングや有り無しもおかしく、巻末に校正者への謝辞が入ってるのを見た時は、えっ校正入ってんの?! ってなった。
 しかし書かれている内容はそうした欠点を補って余りある貴重さ、充実さです。私はモダン/ネイタル占星術から勉強をスタートさせた身で、おそらくほとんどの人がそうかと思いますが、内容は伝統的占星術/かつホラリーについてが中心なので、ほんとうに全く知らないこと、蒙を啓かれることだらけです。
 たとえば、サインの象意=ハウスの象意と混同してしまったのがモダン以後の占星術で、この考え方だと、1ハウスと牡羊サイン、2ハウスと牡牛サインの象意が相互互換可能のように思えてしまうが、本来は全く別物。ハウスに数字が割りふられたのも、後世の出来事とのことだ。これを理解していないとホラリーどころかネイタルでも解釈が曖昧になってしまうだろう。
 もうひとつ例をあげれば、満月について。月がもっとも大きく見えるときなので、俗流解釈だと「月が一番パワーを発揮するとき!」と思いやすい。しかし、満月時には太陽と月はオポジションであり、月は完全に太陽に支配され、パワーを弱めている。月はその速度の早さから旅人にたとえられるが、天頂で太陽がギラギラと旅人を照りつけて体力を削っているさまという擬人化を使って提示されて、目からウロコと同時にとても分かりやすい。プロの占星術師を名乗る人でも、満月=パワー最大と説く人は多いので、伝統的占星術を知ってるか知らないか、ある種線引きに使えそうです。
 太陽がギラギラといえば、9ハウスがなぜ太陽のジョイにあたるかというのも、太陽が9ハウスに入る午後2時あたりが一日で一番暑いからというのも、なるほどと思った。こんな、手を打ちたくなる「なるほど!」がいっぱいに詰まっている。
 だけど、構成がごちゃごちゃとして本当に読みにくい!!! 初学者が戸惑うような専門用語へのリファレンスも十分といえず、入門書のような体裁にもかかわらずまずこの本から学ぶということは全くおすすめできない出来になっています。著者は私と同じ誕生日の太陽サイン魚のかたということで、魚サインの太陽を持つ人特有の、客観性が無くカオスで混沌とした頭のなかをそのままひきうつしたみたいな本になっています(笑)。
 それでも私は、前作「愛のホラリー占星術」次回作の「星の階梯II」は間違いなく買い求めるつもりでいます。伝統的占星術の奥深さ、芸術的な美しさに、すっかり魅入られてしまいました。
 前回読んだいけだ笑み先生の「ホラリー占星術」と内容がかぶる箇所もありつつ、さらに真髄に迫る内容になっているので、読んだ順番はこれで正解だったなと思いました。
 長くなりますが、「エピローグ」から一部引用します。


(以下引用)
 占星術は、神の言葉を読み解く行為と、祈る行為が揃ってしまうために、極めて信仰心を培いやすいものだ。祈ることと、神の言葉を仲立ちすることは、占星術の中で手を握りやすい距離にある。繰り返しホラリーによる判断をしていると、必然的に、神々から絶えず示唆を受けている気持ちを抱かせてくれる領域に達するからだ。

 仏教には、この世の全ては心の顕現であると捉える、唯識論の考え方がある。この考え方では、星々の位置が何かを語る瞬間があるとしたら、意味のあるものとなる。見ただけでは、空に描かれた星々による模様にしか映らない。唯識論で考えれば、現在の星々の位置が私の現状だとすれば、星は動いていくわけだから、将来の星の位置は、未来の私の状態を表すことになる。

 宇宙は、統一体・統合体以外の何物でもない。宇宙が生まれた時から、個々の魂は設計済みであり、同時発生したものであり、片時も宇宙から離れて存在することなどできない。このことは、我々の魂も、絶えず宇宙と共鳴以上の関係で存在し続けていることを意味する。数学的な解析も、形而上学的な解釈も、占星術的な考察も許されていいことである。
(以上引用おわり)

 ビッグバンによる宇宙誕生の瞬間に、全ての時はもう発生したのでは、というのは最近も私がずっと考えていたことだが、似たようなことが書かれていた。
 私は勉強、検証のために既に何回かホラリーチャートを立ててみて当たるかどうか、リーディングは合っていたかなど確かめてみました。当たっていることが多すぎて驚きましたが、しかし占いにおいて一見最重要と思われる「当たる、当たらない」の部分、(もちろん大事ではありますが)それのみに拘泥していたら到底見えないことがある。それは上の記述のような、哲学や宇宙に対しての信仰の部分だ。
 毎回同じことを書いちゃってるかな? 占いってあくまで手段なんだと思う。自分が心安らかに、穏やかに、一日一日を大切にし、世界を信頼して生きるための、単なる手段。世界、つまり自分を愛するための手段。特にホラリーは、自分と宇宙がダイレクトに繋がってるってことをいちばん手っ取りばやく感じられる。天に質問をしたらその瞬間の星図が答えを出してるなんて、荒唐無稽と思われるやり方で…。
 著者は、ホラリーをマスターするまで10年、ネイタルは20年かかると言っている。一見ホラリーのほうがむずかしいように感じていたから、意外だった。自分はスタート地点に立ったばかりなんだな。自分が無知であることをあばかれたら、機嫌が悪くなる人とわくわくする人の2種類が世の中にいると思うけど、私は後者なので、これから伝統的占星術をどんどん学んで、自分の無知を痛感したい。著者が参考にした英語の本もたくさん紹介されていて、英語かー、トホホー、読むの疲れるーって気持ちになったけどまた久しぶりに英語にも挑戦したいです。
 ホラリーチャートは、究極を言えば、たとえずぶの素人でも惑星の品位とハウスの意味と強さだけまず覚えたら、簡単な質問ならすぐ立てて解釈できます。(著者言うに、「試験に受かるか?」という質問なら、アセンダントのロードの品位だけで分かる。くわえて、月がフォールなら確実に落ちる、とのこと)
 自分イコール宇宙であることを実感して、震えを感じてみたい人は、まずは一回ホラリーチャートを立てることに挑戦してみてほしいです。