宇宙の産み落とした私生児

とよかわの西洋占星術について考えるブログ。鑑定依頼は件名「鑑定依頼」でこちらへ→astrotoyokawa@gmail.com

おうしとさそりにまつわるあれこれ

 今回はネット上には載っていない興味深い説を紹介します。「深層プルトニアン占星術」(学研ムーブックス)からの引用で、「おうし座はもともとめうし座だった」というものです。f:id:toyokawasatoko:20190622230313j:plain
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 驚くような話ですがこう考えるとおうし座についての様々な矛盾が解消され辻褄が合います。

 例えばおうしは地サイン=女性サインという事。
 また、支配星の金星も女性天体です。
 そしてこの星座の由来の一説に、ギリシャ神話でヘラによってめうしに変えられた女官イオーの物語がありますが、だとすればめうし座になるはず。
 (参照URL http://mclife.xtools.info/stars/855/2/?amp=1 )

 天体品位表ではおうしはなぜか月の高揚(イグザルテーション)の座。
 イグザルテーションのサインは法則性がなく、由来や根拠のはっきりしないものも多いのですが、ひとつ言えるのは月の大きな象意はずばり「母」だということ。

 更におうし座の成立の歴史を遡るとギルガメシュ叙事詩にも登場する「天のおうし」が現存最古の由来になります。この頃は既に女権社会から男権社会に移行していますから、牛はめすではなくおすになっていますが、使役しているのが地母神であるイシュタルというのが偶然ではない気がします。
 本来は絶対的大地母神であったイシュタルは、ギルガメシュ叙事詩のなかで、主人公ギルガメシュに対立する敵キャラのようになっているが、これは男権/男系社会になると同時に地母神をはじめとする女神が弾圧され、地位が凋落したと考えて間違いないだろう。

 占星学で母性といえばイコール蟹サインと考えられがちだが、母性はどのサインにもある。とりわけおうしサインの母性は、愛情深くも恐ろしい蟹サインの母性と比べてよりどっしりとして包容力がある。

 話は若干変わって、こちらのページでは、各地の神話での龍とおうしの対立や戦いの物語を紹介している。長いページだけど、これが面白い。
 http://www.fafner.biz/act9_new/fan/report/ai/ryuh/ryuhvs.htm

 ドラゴンの語源は、ギリシャ語の蛇。
 いっぽう、黄道十二宮のさそり座は古来はへび座であり、(へびの何度も脱皮する姿と、さそり座の象意である輪廻転生、生と死が結びつけられた)黄道十二宮において、おうし座とさそり座が180度の対立の立場にあるのは、偶然ではなく、深く長い伝統上の理由があるのが分かる。

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 これはミトラ教レリーフで、主神のミトラにほふられている聖牛(おうし)の血をへびが飲んでいる。また、その外性器をさそりが攻撃していて、こちらもまた、おうしと龍=蛇=さそりの戦いがモチーフになっている。ミトラ教の神学は占星術と大変結びつきが強く、アレクサンダー大王の東方遠征の際に西アジアミトラ教が持ち込まれ、占星術も知られることになり、東方で占星術が独自に進化するきっかけになった。ミトラ教は謎も多い宗教だが、そういうこともあって占星学を勉強するにあたって非常に興味深い存在と感じている。
 ちなみにわたしがはじめてミトラ神という言葉を知ったのは、久美沙織の小説「精霊ルビス伝説」からです。

 もうひとつ、前掲のページの最後には、古代では製鉄と邪龍が結びつけられて、忌み嫌われていたという記述がある。
 さそりサインは冥王星の出現まで火星の支配星(現在の副支配星)だが、火星は金属でいうと「鉄」をつかさどる。こんな由来があったのだな、と思いました。